『アイアムアヒーロー』〜映画感想文〜
※この記事はちょっとだけネタバレしています
※グロテスクな表現も含みます
『アイアムアヒーロー』(2016)
上映時間127分
花沢健吾のベストセラーコミックを、大泉洋主演で実写映画化したパニックホラー。冴えない漫画家アシスタントの主人公・鈴木英雄が、謎のウィルスによって「ZQN(ゾキュン)」と呼ばれるゾンビと化した人々に襲われ、逃亡の道中で出会った女子高生の比呂美と、元看護師の藪とともに不器用に戦いながらも、必死でサバイバルしていく姿を描く。主人公・英雄を演じる大泉と、歯のない赤ん坊ZQNにかまれ、人間に危害を加えない半ZQN状態になるヒロイン・比呂美役の有村架純、大胆な行動力でZQNに立ち向かう藪役の長澤まさみが共演。「GANTZ」「図書館戦争」シリーズを手がける佐藤信介監督がメガホンをとった。(以上、映画.comより)
予告編
英雄(ヒーロー)見参!!!!
R15作品、世界でも認められた和製ゾンビ映画!ということで観に行って参りました。
土曜日の昼に行ったからか結構人入ってましたね。隣に座ってた女子高生が途中からガンガン泣き出して、終わった後「ほんとに怖かったぁ、、」って言ってたのが本当に可愛くてサイコーでしたね(ぐう畜)
話題になってましたが、キャストのオールスターっぷりを見て「いくらR15でもなぁ」とタカをくくっていたのですが、実際に観て「これほんとにR15かよ!!(歓喜)」という感じになりました(笑)
もうとにかくZQN(ゾキュン)が気持ち悪い(賞賛)
ビジュアルも動きも本当によくやったなぁという感じで、今っぽいゾンビ感なんだけどバイオハザードシリーズほど化け物でもなく、あくまで人間。
言葉を発したり結構ギリギリまで意識があるっていうのも、気持ち悪さに拍車をかけてると思いますね。ぶつぶつ同じ言葉を繰り返してるのってかなりイヤな感じありますよね。ここら辺はJホラーっぽい。
Jホラー的といえば本作の冒頭、彼女がZQN化するシーンのイヤな感じは完全にJホラー的演出で最高でした。
ベッドからの起き上がりのイヤな動き、転がり落ちてからのイヤな動き、歯の抜け方(笑)正直僕はこのシーンが一番怖かったですね(笑)
続く仕事場のシーンのドランクドラゴンの塚地さんもよかったです。
ZQNになったマキタスポーツさんに日頃の不満をぶつけるシーンのイヤな感じ、そのままZQNに変化していく「どこまでが人間かわからない」感じもいい感じにイヤな感じ(矛盾)でした。
そこからの「日常がちょっとずつ非日常になっていってもう大惨事!」な状況を長回しで緊張感保ったまま、見せる範囲を広くしていく見せ方も巧かったですね。まんまと乗せられました(笑)
ちなみにですが「なんか既視感あるなぁ」と思ったらスピルバーグの『宇宙戦争』もこんな感じでしたね(どうでもいい文章)
で、まぁそっからはサバイバルパニックものになっていくんですが、人の殺し方もZQNの殺しっぷりもサイコーでした。
ヘッドショットしたら人の頭はそういう形になるよね、とか、血の吹き出し具合とか「これでR15で映倫に話つけたスタッフは偉い!」と思いました。
ラストはZQNの大量虐殺なんですが、こんなに死体と血と薬莢が転がってる映画は久しぶりに観ました(笑)
あとこのショッピングモールどうやって撮影したんだろうと思ったら、韓国のアウトレットの跡地らしくて、いい場所見つけたなーと思いました。
荒れ具合がリアル(というか本当に荒れてる)
サイコー!!!!
で、こんな風に「とにかくグロい」とか「気持ち悪い」が売りになっているんですが(もちろんそれも大きな魅力ですが)、本作はちょっと泣けるんですよね。
漫画家を諦められないけど芽が出ないダメダメ30代な鈴木英雄(大泉洋)。昔、漫画賞に受賞した時のトロフィーとか眺めちゃうダメさ。でもその気持ちわかるぞ(笑)
そんな英雄に堪忍袋の緒が切れた彼女(片瀬那奈)が、ブチ切れるシーンはなんかもう自分が怒られてる気分でちょっと本気でヘコみました(ダメ感)
その後も、ZQNがいるのに「銃刀法違反になるから」と言ってせっかくの銃を使わなかったり、小悪党にボコられても平謝りだったりダメさを遺憾なく発揮する英雄。
そんな英雄が「勇気を振り絞って扉を開ける」シーンは本当に号泣ものでした。
イメージで何回も失敗するくだりとか、「わかるぞ、わかるぞぉ!でも頑張れよぉ!!」と完全に熱が入ってしまいまして、初めて彼が銃を撃ったシーンで思わずガッツポーズしてしまいました(笑)
まさにRHYMESTARの名曲『ONCE AGAIN』の宇多丸バース!
本作で出てくるZQNはみんな「過去の記憶」に囚われてしまった存在なんですね。
で、人によっては「過去の栄光」だったり「不満に思っていること」だったり「頑張ってたこと」の記憶だったりするわけです。深読みするなら、この辺はちょっと現代人の在り方を象徴してるのかなぁと。酔っ払った時ってこうなっちゃいますよね。で、やっぱりそういうのってちょっとダサかったりウザい感じに見えてしまう(笑)
そんなZQN達を「撃ち壊し」ながら進む、夢を諦められない人だった英雄。ZQNを一先ず片付けた英雄の姿は「カッコイイ」の一言でした。
そして、ラストの名前を名乗るシーンがズシンと重く感じてからの「アイアムアヒーロー」というタイトルで鳥肌が立ちました。
まぁZQNに関しての謎はほとんど解決されていないですし、終わり方は賛否両論あるかもしれません。でもそこが主軸の映画では無いと僕は思います。
そんなことより不満点は、有村架純ちゃんがずっと可愛いままなことですね。もうちょっと気持ち悪くなった有村架純が見たかった!!!(フェチ)
可愛いじゃねぇか!感染してるならもっと特殊メイクマシマシにしろよ!!
とまぁそんな感じで、尻切れトンボな分この後どうなったかが想像できたり、ZQNが現代人を批評的に象徴しているみたいな読み解きもできますし、難しく考えなくてもアツくなれて興奮できるエンターテイメント作品であることは間違いないです!
和製ゾンビ映画の傑作でした!!
原作も読んでみようかなぁ。
『ちはやふる 下の句』〜映画感想文〜
※この記事はちょっとだけネタバレしています
『ちはやふる 下の句』(2016)
上映時間103分
監督・脚本 小林徳宏
広瀬すず主演で末次由紀の大ヒットコミックを実写映画化した「ちはやふる」2部作の後編。主人公・綾瀬千早と幼なじみの真島太一、綿谷新の3人を中心に、それぞれの思いを胸に競技かるたに打ち込み、全国大会を目指す高校生たちの青春を描く。キャストには、千早役の広瀬のほか、太一役に野村周平、新役に真剣佑とフレッシュな若手が集結。千早や太一と同じ瑞沢高校競技かるた部の仲間で、上白石萌音、森永悠希、矢本悠馬、競技かるた界の強豪で清水尋也、松岡茉優らが共演している。(以上、映画.comより)
予告編
「また続編で会おうね!」、、、「いつや?(涙目)」
はい。原作のファンであり、「上の句」の期待以上の出来に歓喜した僕なので、実は公開初日に観に行っていました。
「上の句」に関しては、主に「脚本の巧みさ」と「役者陣の良さ」が印象に残ってて、青春映画として、明快な作品だったと感想を述べました。(上の句の感想はこちらの記事です)
で、今回の「下の句」ですが、前作とは結構トーンが違う映画だなぁと思いました。
前作がかるたに打ち込む中で友情を育む話なのに対して、本作は「打ち込む意味」を問う話のような気がして、その意味で前作より主人公達の葛藤のシーンが多く、ぶっちゃけ後半までは爽快感が無い映画になっていました。
まぁでもこれは起承転結の起の部分は前作で終わってるから、後編としては正しい作りなのかなぁと思います。
前作では「一致団結!全国大会頑張るぞー!」となった瑞沢かるた部と、「新、かるたやめるってよ。」というところで終わりましたが、今作はいきなり千早と太一が新に会いに行くところから始まります。
変わってしまった友達に悶々とする千早の前に最強のクイーン若宮詩暢(松岡茉優)登場で、千早と太一のかるたへの想いにすれ違いが、、、
ここからの二人が苦悩する展開はちょっと中だるみした感が否めないですが、先述した通りの構成なので、ラストにどーんとカタルシスを与えるためのものなんだろうと思います。
それにしてもちょっと間延びした音楽の使い方とか、いわゆる「邦画っぽいなー」と言われるようなベタベタした演出など、勿体無い部分が目立っちゃってました。
でも、1人になった新を千早が、孤立した千早を太一が、それぞれ「自分が強くなることで繋がろうとする」というストーリーを丁寧に描けてたのではないかと思います(必死のフォロー)
で、そういう葛藤のシーン≒主人公たちのウジウジが長かった分、ラストの試合で葛藤を一先ず乗り越え、かるたに打ち込む意味を見出し、試合に臨む主人公たちのアクション1つ1つにはドッと感動しました。
それと「何かに打ち込む意味とは」への原田先生の回答もよかったですねー。これは多分原作に無い映画オリジナルの台詞なので、意表を突かれてしまいボロボロに泣きました(笑)
あと、やっぱり北央高校の須藤さんが「マル秘ノート」を渡すところですねはグッときましたねー。
原作ではヒョロくんが太一に渡すんですが、部長の須藤さんが千早に渡すことで、重みが変わってくる。
「敵だった人でさえ味方だ」っていうメッセージがより強調されていたと思います。
「何があっても、1人になってはダメなんだよ!」
という台詞が出てきますが最終的に「誰もが1人ぼっちでは無い」というものすごく真っ当なメッセージが浮き上がってきます。これは原作が持つメッセージの1つでもありますが。
かるたを通じて過去の言葉と繋がること、その言葉を次に繋げること、かるたを通じて人と繋がること、情熱を繋げること。
改めて、この作品の「何かと繋がることの大切さ」の魅力を感じることができる映画だったかなと思いました。
さて、ここまで色々書いてきましたが、この映画の一番大切なことをまだ書いていません。
大正義、詩暢ちゃん a.k.a 松岡茉優!!!
前作では「広瀬すずの魅力すげぇ!!」ってことを言ってましたが本作は「松岡茉優の色気すげぇ!!」ってことですね(雑)
京言葉を使うのですが、関西人の僕としてもまったく違和感のない京都弁っぷり。京都の女性のちょっといけずな感じも完璧に演じてました。
あと試合のシーンはもちろんですが、大事な場面でのアップは絶対に「瞬き」をしないんですよね。演技論でよく言われる目の演技ですが、瞬きをしないことで「不動のクイーンの貫禄」みたいなのも表現できてたんじゃないかと思います。
で、広瀬すずとの試合のシーンの二人の凛々しさが半端じゃ無い。
もう本当に画面に映ってる二人の姿が美しいんですよ。これだけで映画館に行く価値がある(暴論)
ダサいキャラクターに反応するときの演じ分けも完璧だったし、本当にもう松岡茉優さんには「最高だ!」という言葉しか出てこないですね、はい。
色々不満点も書きましたし、「そういえば威風堂々の使い方サイコー!」ってことを書くのを忘れたり、最後の方ただの松岡茉優賛美になっちゃいましたが、是非映画館で上の句とセットで観れる今、今観て欲しい作品です!!
続編も制作されるということで、「ちはやふる 上の句&下の句」は絶対に観るべき、邦画青春映画の傑作だと思います!
オススメです!!
松岡茉優に鼻で笑われたい。
全巻並べると背表紙が綺麗なんですよねー
『ズートピア』〜映画感想文〜
※この記事はちょっとだけネタバレしています
『ズートピア』(2016)
これを取り返そうとするジュディも可愛かったなぁ、、、
『ちはやふる 上の句』〜映画感想文〜
※この記事はちょっとだけネタバレしています
『ちはやふる 上の句』(2016)
上映時間111分
監督・脚本:小泉徳宏
(あらすじ)
幼なじみの綾瀬千早(広瀬すず)、真島太一(野村周平)、綿谷新(真剣佑)の3人は、新に教わった「競技かるた」でいつも一緒に遊んでいた。新の競技かるたにかける情熱に、千早は夢を持つことの大切さを教わるが、そんな矢先に新は家の事情で遠くへ引っ越してしまう。高校生になった千早は、新に会いたい一心で「競技かるた部」創設を決意し、高校で再会した太一とともに部員集めに奔走。なんとか5人の部員を集めて競技かるた部を立ち上げた千早は、全国大会を目指して練習に励む。(以上、映画.comより)
予告編
めっちゃ良く出来ててよかった!!(涙)by原作ファン a.k.a 私
これに関しては観たのが4月の初頭なのですが、まだ映画館で上映されているので、この記事を読んでくださった方は今すぐチケットを予約してください(真顔)
と、言いたくなるほど普通によくできた青春映画でした。
私はがっつり原作のファンなので、実写化の情報とビジュアルを見たときは正直、「マジか、、、これはキツいんじゃないか」という心配でいっぱいでした。
そもそも、原作はほぼ全員のキャラクターの背景が丁寧に描かれていて、いろんな部分でその物語が重要になってくるので、これを映画で描くとなると登場人物の描きこみ不足になりかねないだろうと。
あと、見せ場である「試合シーン」は競技かるたの、一瞬で決まるというスピード感が魅力なのですが、あのスピード感を映像で魅せるとなると本物の選手 a.k.a モノホンカルターを呼ぶしかないのでは?、凡庸な邦画アクションよろしく、スロー→チャカチャカ早回しみたいなことされたら容赦ねぇぞ!!みたいな気持ちだったわけです。
しかし、いざ作品を見てみると先述した心配はかるたの札よろしく完全に吹っ飛びました。(無駄な例え)
まず、いくつかのキャラクターの設定を原作から変えることで説明を省くという大胆かつ的確な変更。でも、ただの「物語のためのキャラクター」になっておらず、ちゃんと実在感がある登場人物になってる。当たり前のことなんですが、これができてない作品、特に漫画原作モノの邦画に多いと思います。
で、メインに据えるキャラクターはもちろん千早(広瀬すず)と太一(野村周平)なんですが、本作のクライマックスが机くんこと駒野(森永悠希)エピソードなのと関係して、ほぼ太一メインになっています。
というのは、太一は金持ちで文武両道なイケメン野郎なわけですが、かるたに関しては「天才」の千早と比べたら「持たざる者」です。ゆえに卑怯だったり、かるたをやる意味に悩んだりします。
で、机くんはやっとの思いでかるた部に居場所を見つけたけど全然勝てない人。
この二人の「持たざる者」がどう試合と向き合うかがクライマックスなんですが、本当に感動的で。
机くんが「するかしないかというその分かれ道で、するという方を選ぶ」瞬間はもう号泣でした。。。
さながらイタリアの種馬!
太一のほうも、努力+運が導く結果にロジックがきちんとある見せ方がうまかったですね。最後に出た札がねぇ、、、
ま、それでもここまでは上手い監督ならば超えられるハードルです。
最大のハードルはかるたバカの残念美人「綾瀬千早」を実在感のあるように見せること。
千早はもっと端正な美人顏の綺麗系で(個人的な意見)、広瀬すずはやっぱり小動物的な可愛い系ですので(個人的な意見)、僕の好みからいえば合っていないなぁという感想でした。(あくまで個人的な意見です。)
が、映画見てみると広瀬すずがビックリするぐらいの振り切ったバカ演技(絶賛)で好演していて、「この子しかいない」と思うほどハマっていました。
「海街diary」でも証明済みですが、広瀬すずの身体能力の高さが遺憾なく発揮されていたり、集中した時の眼の演技だったり、「あぁ、これは千早だ」と原作ファン納得の出来。あと半端ない可愛さ。
広瀬すずは本当にすごい女優になるんじゃないかと思いますね。可愛さが半端ないじゃない。うん。
脇を固める役者陣も最高でしたし、新役の真剣祐さんの佇まいとかすごかったし、2回目に出てくる山登りのシーンの思い出し表現が最高に泣けたし、一言で「青春サイコー!」って感じです!(雑なまとめ)
もちろん、欠点も多い映画ではあると思います。
演技テンションのバランスは若干気になりましたし、省略したせいで説明不足ななってる場面もあるように思いました。
あと不満点といえば、原田先生のちはやふる屈指の名台詞が出てくるのですが、それの使い方が勿体無いなぁとか。
まぁしかしそんなことは関係なく、本当に老若男女問わず、色んな人が観て楽しめる映画になってるんじゃないでしょうか。
下の句と同時に観れる今!観に行ってみてはいかがでしょうか?
普通に超オススメです!
原作、アニメももちろん超オススメです。
『野のなななのか』〜映画感想文〜
今では過疎ってきたmixiでポツポツ映画の感想とか書いてたのですが、意を決してネットの大海原に飛び出してみました。
拙い文章ですが、映画やら音楽やら日常のこと勝手に書いていこうと思うので、よければ骨を拾ってください(笑)
で、一発目何を書こうと考えてたのですが一応このブログのグループが「映画」なので映画のことがいいかなーと。
そしたら一昨日予約していたこの作品のDVDが届きましたので、『野のなななのかDVD発売記念』ということで、大林ファンとしてこの作品を一発目に決めた次第です。
※この記事はちょっとだけネタバレしています
『野のなななのか』(2014)
名匠・大林宣彦監督が北海道芦別市を舞台に描いた人間ドラマで、2011年の監督作「この空の花 長岡花火物語」の姉妹編ともいえる作品。ひとりの老人の死によって郷里へ集まった家族の姿と、その老人の人生に大きな影響を及ぼした戦争体験を通し、3・11以降の日本再生のあり方を問う。芦別市で古物商を営む元病院長・鈴木光男が92歳でこの世を去り、離れ離れに暮らしていた鈴木家の人々が葬式のため帰郷する。そこへ現われた謎の女・清水信子により、次第に光男の過去が明らかになっていく。1945年の太平洋戦争終結直前、光男は樺太でソ連軍の侵攻を体験しており……。タイトルの「なななのか」は、四十九日の意。(以上、映画.comより)
予告編
完全に面食らいました、、、(笑)
前作『この空の花~長岡花火物語~』との姉妹編で、『シネマゲルニカ』と銘打たれたこの作品。
『この空の花~』は、スピーディで情報量が多くてとにかくヤバい映像(説明放棄)、けど最後はきっちり大円団で感動!みたいな奇跡のような映画でした。←コレに関してはまた後日ちゃんと書きます(笑)
一言で言えば、「凄いヘンでわけわからんけど、ものすごく感動している、、、!」みたいな状態(≒軽い躁状態)になれる映画ですね。
というわけで、本作もある程度覚悟していたのですが、なんなら前作より飲み込みづらい作品でした(笑)
今回は割と「物語」あるし、その点では前作より解りやすいはずなんです。
が、まず会話とかナレーションによる情報量が半端じゃない。しかも登場人物同士の会話が微妙に噛み合ってなかったり、説明がないまま固有名詞とかバンバン出てくるので、「お話」をなぞることはできても、いまいち腑に落ちないように出来ています。
もちろん時制もシャッフルされて、大林監督作品にはよく出てくる「死者と生者、過去と現在と未来の混在」が本作はとにかくヒドい(褒めてます)
あとこれも監督の十八番ですが、トンデモ合成処理が本作もすごい。窓の外の風景が一瞬で違う季節になってたりは慣れっこだったのですが、今回はおもわず「ヒェッ」てなる合成が、、、マジでビビりました、、、(キーワードは「安達祐実」と「あの白黒写真」)
とまぁこんなかんじで、話だけ取ればいくらでも解りやすい映画にできたはずなんですが、やっぱりヘンな映画でした(大絶賛)
そもそも、あらすじにもあるように「鈴木光男(品川徹)の過去」が本人の独白で明らかになるんですが、登場人物の生きている人たちがその過去を知る場面は無いんです。
じゃあこの独白は誰に向けて語っているのか、誰が鈴木光男の過去を知っているのかという。
さらに言えば、登場人物が持つ「清水信子(常盤貴子)に対する記憶」は結構バラバラで、一応それらしき説明はあるんですが辻褄は合わないし。
実はこの作品内の現在に生きる人たちは、光男や信子、お互いに対して「自分の記憶や求めるイメージ」=「過去や幻想」でしか理解していないのではないでしょうか。
で、その理解の穴を埋め、自分の過去に区切りをつけるのがラストの「野のなななのか」のシーンなのかなぁと。
その中には過ちや後悔や正しくなさもあるけども、未来を生きるために、迷わないように踏ん切りをつける。そしてその次のシーンでは止まっていた時計が再び動きだす。
と考えれば、やっぱり大林監督が一貫して映画にしてきたメッセージかもしれないですねー。
芸術やフィクションは人の生きる力になると同時に、誰かを自分の望む幻想に閉じ込めてしまうという話は「はるか、ノスタルジィ」や「時をかける少女」でもやっていたし、誰かの代わりに誰かが生きるっていうのは「転校生 さよならあなた」だし、「ふたり」や「あした」、「その日の前に」的な死生観も含んでいる。
また、前作では「人間の想像力」やフィクションの力強さを肯定的に押し出していましたが、今作はそれに対するある種の危うさも含んだ内容だったかなぁと思っています。
だから、最後までオールハッピー感を味わえない。味わわせてくれない(笑)。そこも考えろということですかねぇ、、、
で、そんな171分の間に浮かび上がってくるのが、芦別の炭鉱と文化の歴史と原発、戦争と失われた青春の物語。
それら全部ひっくるめて、「どう生きて、どう死ぬか」ということを問いかけてきます。
そんな映画、受け止めきれるかーーー!!!!!!と思いますが、挟まれるパスカルズの音楽や芦別の美しい映像、登場人物のキャラの濃さ(笑)のおかげで鑑賞後の感覚として、ズシンとくる希望に溢れた映画だと思いますよ。さすがは映像の魔術師です。
あと、特筆すべきは安達祐実の圧倒的な美しさですね。マジで16歳に見える(笑)めちゃ可愛い(笑)合法ロ○(笑)
ほんと大林監督は女優を撮るのがうまい!≒スケベ(超誉めてます)
一応リアルに小さい頃の安達祐実少女置いときます。
他にも冒頭から赤い色が多用される美術とか、孫たちの名前に「夏」がないとか、親世代の不在=継承の断絶?とか、めちゃくちゃやってて実はすげー計算されてる作りであることは間違いないですし、この映画の持つ不穏な美しさやメッセージはまさに「ゲルニカ」的。
とにかく「またすげーもん見せられた、、、!」という点で大満足のでした。予約して買ってよかったー、、、
無闇にオススメしませんが、興味がわいたら是非!(DVDレンタル出るかわかりませんが)