チャンタの映画感想ブログ

新作・旧作映画のレビューブログです。ネタバレはできるだけ避けています。

『シン・ゴジラ』〜映画感想文〜

※今回の記事はかなりネタバレしてます。

※個人的な思いが多く含まれていますので長文です。

 

 

シン・ゴジラ』(2016)

 

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上映時間  119分

総監督・脚本・ 編集 庵野秀明  監督・特技監督 樋口真嗣

ゴジラ FINAL WARS」(2004)以来12年ぶりに東宝が製作したオリジナルの「ゴジラ」映画。「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」の庵野秀明が総監督・脚本を務め、「のぼうの城」「進撃の巨人 ATTACK ON TITAN」の樋口真嗣が監督、同じく「のぼうの城」「進撃の巨人」などで特撮監督を務めた尾上克郎を准監督に迎え、ハリウッド版「GODZILLA」に登場したゴジラを上回る、体長118.5メートルという史上最大のゴジラをフルCGでスクリーンに描き出す。内閣官房副長官矢口蘭堂を演じる長谷川博己内閣総理大臣補佐官赤坂秀樹役の竹野内豊、米国大統領特使カヨコ・アン・パタースン役の石原さとみをメインキャストに、キャストには総勢328人が出演。加えて、狂言師野村萬斎ゴジラモーションキャプチャーアクターとして参加している。(以上、映画.comより)

 

 

 

 予告編 

youtu.be

 

 

 

 

 とにかく観てください。今すぐチケットを予約してください。絶対に映画館で。オススメです!!

 

 

 公開から2週間、すでに興行収入が20億を突破した本作、普段映画館に行かない層の人たちも足を運んでいるようで本当に嬉しいですね。

 僕も、公開2日目と今週の月曜日の2回観に行ってまいりました。

 2回とも劇場はほぼ満員、若い人も多かったのですが40〜50代らしき方々が多かった印象です。

  終わった後、おじさん達がしみじみと「よかったな」と言っていたのにジンときました(笑)

 

 

 前提として、僕はそんなにゴジラに詳しくありません。もちろん小さい頃はゴジラ映画を観に行ってましたし、ゴジラは大好きですが、明確に記憶に残っているのは大学時代になってから観た1954年「ゴジラ」と「ゴジラ対ヘドラ」ぐらいでして。。。

 

 ちなみに実家に置いてあったパンフレットを探したら、マイファーストゴジラは「ゴジラVSデストロイア」でした。

 

 このゴジラですね。体が赤くなっているのがカッコイイです。めっちゃ人形の尻尾が取れやすかったのを覚えてます(笑)

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 それからエメリッヒゴジラ、ミレニアムシリーズを「ゴジラ×メカゴジラ」まで観てゴジラを卒業しました。

 そんな感じの距離感ですが、本作の制作発表が出た時はめちゃくちゃ嬉しかったです。ギャレスエドワーズ版ゴジラを観て、なんか違うなぁと思っていたので(映画は楽しんだけども)

 

 で、もう1つの要素が庵野秀明が総監督ということですね。

 庵野ファンとしては「庵野さんがゴジラ、、、でもエヴァの続きはどうした!?」みたいな気持ちになりまして。

 まぁ、映画を観てパンフレットの庵野さんのメッセージを読んでエヴァ早く作れよとか思ってごめんなさい」と謝罪したい気持ちになりましたね。

 それぐらい「シン・ゴジラ」は傑作だと思いました。庵野さんありがとうございます。

 

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 前置きが長くなりましたが、とりあえず極力ネタバレしない程度に書いていこうと思います。

  

 

 

 褒めたいところは山ほどあるのですが、僕が思うこの映画のすごいところは「アニメ的な魅せ方を実写で成功させた」という部分です。

 本作の大きな魅力である会議シーン。もちろん、綿密な取材によるリアリティもすごくて、「あぁ実際に現場はこうなんだろうなぁ」と感じられるし、上の官僚たちの間抜け感も楽しいところ。あと、ものすごいスピードで交わされるほぼ専門用語での会話のグルーヴ感も非常に面白いです。

 

 で、これらに加えて読ませる気のない字幕を出したり、細かくカットを割ってたりして情報量とスピード感がとにかくすごい。

 これはもろにエヴァの経験を生かしてると思うのですが、とにかくこっちが映画に巻き込まれていく感じがして気持ちいいです。

 会話シーンの人物の撮り方もアニメっぽい画なんですが、カットがどんどん変わっていって会話劇でもすごく動きがあります。

 

 普通の映画だったらしっかりセリフ言わせたり演技させるために、長回しとかで撮ったりする箇所があると思うのですが、そこは割り切った編集したことで画的な格好良さとスピード感が出て、早口&専門用語ばっかりの会議シーンを飽きさせないようになっていたと思います。

 

 個人的には矢口蘭堂率いる「巨大生物特設災害対策本部(巨災対)」設置の、机とかパソコンとプリンターが並べられていくシーンが好きですね。プリンターが並べられていくのがカッコイイ映画です。(個人的すぎる感想)

 

 あと、ゴジラ自衛隊の戦闘シーンが画的に超かっこいいとか、兵器の描写が細かくて楽しいとか色々あるんですが、そのあたりと関連して、ゴジラが本当に恐ろしいと思えるところも良いです。

 

 本作のゴジラは本当に強く描かれていて、「勝てねぇだろこれ」と思わされます。

 

 初号機が暴走した時のミサトさん置いときますね。

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 で、そのゴジラの強さを感じる理由として、自衛隊兵器の強さ&怖さが詳細に描かれているところだと思いました。

 

 「兵器を都市で使うとどうなるか」が先述した会議シーンでしっかり言及され、その上で、「兵器を使うまでにどれだけ段階があるか」が描かれるおかげで、「最終手段としての武力」という実感が湧くし、戦闘シーンでも段階を踏んで徐々に強い兵器を投入していくのが細かく描かれるので、「それをもってしても倒せないゴジラの強さ」が実感できたんじゃないかと思いました。

 

 ゴジラの造形も"怪獣-KAIJU"って感じのある種のキャラクター感より、不気味さ、異質な生物の怖さが強調されててよかったです。歯並び悪いし、狂った目してるし。

 新劇エヴァQと同時上映の「巨神兵東京に現る」の巨神兵と同じような印象を感じました。

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 その他、役者陣もよかったです。「セリフを早口で言わせる」という演出のおかげで、日本映画のダメ演技を回避できていますし、状況の切迫感も増して全員がかっこ良く見えました。

 特に「あぁ、すげぇ頑張った」と思ったのは石原さとみさんですね。昨年の「進撃の巨人」があったので不安だったのですが、アスカとミサトさんを足して2で割った感じの"現実味のないキャラ"を良く演じられていたと思います。

 

今にも「それがNERVの出した結論よ」と言い出しそうな石原さとみ

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 とにかく、わかりやすいプロットにスピード感とカッコイイ映像、”ゴジラという災害に対してどう対応していくか"というシミュレーションが楽しめる映画です。

 

 今年は本当に素晴らしい邦画がたくさんありましたが、ここにきてあらゆる意味で「この国はまだまだやれる」と思える1本が出てきてしまいましたね。

 

 まだ観てない方は是非、今すぐに映画館へ!オススメです!!!

 

 

 

 

 

 というわけで、ここからネタバレ有りでいきます(笑)

 未見の方はそっとページを戻ってください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なにがよかったかといえば、僕はやっぱりゴジラの怖さ&神々しさです。

 第二形態が出てきた時は、「誰だお前、、、」と思ってギャレゴジの悪夢を思い出したのですが、なるほどそういうことかと。

 

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 でも僕はこいつが一番怖くて、エラみたいなところから血が出て生理的に無理!と思いました(笑)

 なんとなく、このぐらいの生き物の大きさが実際に出てくると一番パニックになると思うんです。

 第四形態までいくと、大きすぎて逆に見とれてしまうというか、、、

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 そこからの東京が破壊されるシーンは、もろに3.11を想起させて本当に辛かったです。コミカルな感じで官僚の間抜けなシーンも挟まれるのですが、正直笑うことができなかったぐらいにショックでした。

 

 

 逆にゴジラの東京大破壊のシーンは怖さよりも、美しさを感じました。

 出血からの音楽の入り方、映像の美しさ、なすすべもなく東京が燃やされていくのに圧倒されて、感動のあまりここで泣きました(笑)

 

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 日本軍の兵器をどれだけ投入しても傷一つ付かなかったゴジラに初めてダメージを与えたのがアメリカ軍の空爆

 気持ちのどこかで「触れてはいけないものを他人が触れた」ことへの虚しさとか、攻撃を受けたゴジラの咆哮に感じた哀しさとか、色んな気持ちがゴジラ放射能熱線が出た瞬間に爆発して、ある種のカタルシスを感じました。

 圧倒的に美しくて恐ろしい場面になっていたと思います。

 

 

 終盤の「ヤシオリ作戦」は宇宙大戦争のマーチと相まって、超楽しかったです。

 在来線爆弾もサイコーでしたし、血液凝固剤を飲ますという「なんじゃそりゃ!」な作戦も寝てる酔っ払いに水を飲ます苦労を思い出して面白かったです。 

 

 

 ただあくまで個人的な思想の問題なのですが、結末にちょっと引っかかりがありました。というのは、明らかに3・11や戦争を意識させる映画で、この結論はどうなのかと。

 ヤシオリ作戦で一先ず対処できたものの、あの作戦で多くの人が亡くなったわけで、それを踏まえて「スクラップ&ビルドで日本は成長してきた」と政治家が言うのは非常に怖いところがあるなぁと思いました。

 核の申し子であるゴジラ人智科学で押さえ込んで解決、というのは初代ゴジラを踏襲しているのですが、戦後復興というものと3・11後の復興のあり方ってちょっと違うんじゃないかとか。

 

 少なくとも、少しでいいから観客が感情移入する側(矢口チーム)の人間が死ぬシーンは描いてもよかったのではと思います。

 ヤシオリ作戦中に矢口が無念の想いから目を瞑り、それでも続けるという意思で目を開けるシーンの切実さがより強いものになったと思います。

 

 ただこの映画、というか庵野秀明という人はそういうことを描く気が更々無く、「自分の思うゴジラの在り方をカッコ良く描きたい」という気持ちで作ったと思うので、そもそも伝えたいメッセージとかは無いんだと思います。

 本作は、ゴジラという実はメッセージ性の強い題材が、彼の「破壊することでその大切さを描く」という作家性とマッチした結果の作品だと、二回見て思いました

 

 

 それにしても、特に訴えかけてきてるわけでもないのに、こっちが勝手に受け取って考え始めてしまうのはつくづくエヴァっぽいなぁと(笑)

 

 

 鑑賞中こんなにもワクワクして感動して、終わったあと悶々と色々考え込んでしまう作品はそれだけで価値があるし、本作に関して言えば、日本の特撮映画の希望のようにも感じられてすごく嬉しかったです。

 

 これからは、エヴァはもちろん庵野さんの実写映画を待ち、他の日本のクリエイターが「私は好きにした、君らも好きにしろ」という庵野さんからのメッセージを受けて、色んな素晴らしい作品が出てくるのを楽しみにしながら生きていこうと思いました(大げさ)

 

 本当に傑作でした!!庵野さんありがとう!!

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