チャンタの映画感想ブログ

新作・旧作映画のレビューブログです。ネタバレはできるだけ避けています。

『グッドナイト・マミー』〜映画感想文〜

 ※今回の記事はちょっとだけネタバレしてます。

 

 

 『グッドナイト・マミー』(2016)

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上演時間 99分

監督・脚本 ベロニカ・フランツ  セベリン・フィアラ

美容整形により人格まで豹変した母親の正体を疑う双子の少年が引き起こす惨劇を描いたオーストリア製サイコスリラー。2014年のシッチェス・カタロニア国際映画祭ほか、世界各地の映画祭で話題となり、米アカデミー外国語映画賞にエントリーするオーストリア代表作品にも選出された。森と畑に囲まれた田舎の一軒家で母親の帰りを待つ9歳の双子の兄弟。ところが、帰ってきた母親は顔の整形手術を受けており、頭部が包帯でぐるぐる巻きになっていた。さらに性格まで別人のように冷たくなってしまい、兄弟は本当に自分たちの母親なのか疑いを抱くように。そして正体を暴くべく彼女を試しはじめるが、その行為は次第にエスカレートしていく。「パラダイス」3部作などで知られる鬼才ウルリッヒザイドル監督の妻で同シリーズの脚本にも参加したベロニカ・フランツと、彼女と2度目のタッグとなるセベリン・フィアラが共同監督を務めた。母親役に「ザ・ファイト 拳に込めたプライド」のスザンネ・ベスト。ヒューマントラストシネマ渋谷、シネ・リーブル梅田で開催の「未体験ゾーンの映画たち 2016」上映作品。(以上、映画.comより)

 

 

 予告編

youtu.be

 

 

 

 

 心底、厭な映画です(褒めてます)

 

 

 

 「未体験ゾーンの映画たち 2016」に選ばれた作品ということで鑑賞しました。

 劇場へは間に合わなかったのですが、予告編を見て「これはゾクゾクしそうやでぇ!」と気になっていた作品であります。

 予告編のリンクも貼っておりますので、是非見てください!

 

 

 で、いざ本編を鑑賞してみると、この予告編が本当によくできた予告編だとわかりました。

 「思っていた映画と違うじゃねぇか!!(歓喜)」みたいな感じです(笑)

 ここでちょっとだけネタバレしますと、予告編で見れる「カサカサした虫が口に入って次の瞬間ボリボリしてるシーン」は、うまく編集された映像です(笑)

 

 

 本編の話をしますと、「美容整形手術で顔面を包帯グルグルにして帰ってきたお母さんが、どうも様子がおかしい。この人、お母さんじゃない!!」と双子の兄弟が、母親(?)の謎に迫っていくというストーリーです。

 最近では、M・ナイト・シャマランによる「ヴィジット」を思い出すストーリーですね。流行ってるんですかね?

 

  まぁこういったホラーやミステリーは見慣れているので、鑑賞前はなんとなくタカをくくっていたのですが、物語は予想外の展開に、、、

  

 という構成になっているのですが、勘のいい人は結構序盤で真相に気づきます(笑)

 

 正直に言いますと、僕は冒頭のシーンでなんとなくわかってしまったため、映画に仕掛けられたトリックにさほど驚けなかったです(笑)

 

 伏線の張り方自体は、怖さを助長するように仕掛けられていて上手いとは思うのですが、親切すぎるほど提示されているので、そこはかなり勿体ないなぁと感じました。

 真相がわかってしまうと、ミスリード演出がかなり強引だったと感じてしまうのが本作の弱点だと思います。

 

 

 が、本作の魅力は「大どんでん返し!」的なものでは無いため、真相がわかってもこの映画は楽しめます!

 

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 「どんでん返しこそがウケる要素だと思ってたよ」

 

 

 まず、グラフィカルで冷たい映像が怖いです。

 廊下の撮り方やシンメトリックな画面が多い点でなんとなくキューブリックを意識していると思われるのですが、色のトーンや絵画的に切り取られた画面が、綺麗だけど不気味という感じになっているんじゃないかなと思います。

 

 母親のキャラクターも良いです。誰かわからない包帯グルグルの顔も良いのですが、なんかヨレヨレのワンピース着てたり、異常な程神経質だったり、関わりたくねぇ感ビンビンです(笑)

 

 ただ、僕が一番怖かったのが主人公の双子の兄弟です。

 ホラー映画で「双子の子供」というだけでちょっとブキミ感ありません?(あくまでホラーに出てくる双子です)

 

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 よくみると壁が総柄な感じとかよく似ていますね。

 

 

 

 ただでさえ似ているのに、途中から母親を惑わすために髪型と服装を全く一緒にするので、同じ人間が二人いるように見えてくるのです。

 母親が喋りかけても、見分けがついていないとどっちに喋っているのかわからなくなる。

 

 母親も誰だかわからないし双子も見分けがつかないから、誰が本当のことを言っているのかわからない。しかも全員がちょっと異常。

 

 この状況を冷たい映像で客観的に見せることで、背筋がゾクゾクしてくる怖さを味わえるようになっています。

 

 これだけでも十分静かなホラーとして楽しめるのですが、僕が「厭な映画」と評したのは、無自覚な狂気が心底怖いからです。

 

 主人公の双子が、母親に色々仕掛けるんですがそれが本当にいき過ぎてまして。

 顔に虫眼鏡を使って黒子を作ろうとしたり、母親が騒いでうるさいと思ったら接着剤を使って口を閉じたり。

 この辺り、子供ゆえの無邪気な暴力性がむき出しになってて本当にイヤな気分になります。

 

 で、極め付けは予告編でも出てきました「黒いアイツ」

 とにかく大量に出てくるソイツが生理的に無理です(笑)

 これは人を怖がらす手段として反則です(笑)無条件に出てくるだけぞわぞわする(笑)しかも鳴き声までついてるし、、、

 

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 そんなわけで総合的に「厭な映画」というのが一番しっくりくる表現になりました。

 最終的にすごく哀しい結末になるのですが、これに関しては解釈が分かれる部分かもしれません。

 

 家族の絆とは。死を乗り越えることとは。人間の弱さが起こしたすれ違いの悲劇なのかなと僕は思いました。

 

 

 ホラー映画のよくある展開ともいえるストーリーをビジュアルと不気味のアイデアの斬新さで魅せた作品だと思いました。

 

 とにかく画的にゾクゾクしたい!気持ち悪いモノを見るという楽しさ、正に未体験ゾーンの楽しさを味わえる一本。

 

 個人的には「悪を呼ぶ少年」とセットで観るのがオススメです!!

 

 

 

 

シャマランのヒップホップ映画です。最高!

ヴィジット (字幕版)

 

本作はこれに確実にインスパイアされてます。子供ゆえの恐怖

悪を呼ぶ少年 [DVD]