『君の名は。』〜映画感想文〜
※この記事はちょっとだけネタバレしています
『君の名は。』(2016)
上映時間 107分
監督・脚本 新海誠
「雲のむこう、約束の場所」「秒速5センチメートル」など、男女の心の機微を美しい風景描写とともに繊細に描き出すアニメーション作品を手がけ、国内外から注目を集める新海誠監督が、前作「言の葉の庭」から3年ぶりに送り出すオリジナル長編アニメ。「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」「心が叫びたがってるんだ。」で知られ、新海監督とはCM作品でタッグを組んだこともある田中将賀がキャラクターデザインを担当し、「もののけ姫」「千と千尋の神隠し」などスタジオジブリ作品に数多く携わってきた安藤雅司が作画監督を務める。1000年ぶりという彗星の接近が1カ月後に迫ったある日、山深い田舎町に暮らす女子高生の宮水三葉は、自分が東京の男子高校生になった夢を見る。日頃から田舎の小さな町に窮屈し、都会に憧れを抱いていた三葉は、夢の中で都会を満喫する。一方、東京で暮らす男子高校生の立花瀧も、行ったこともない山奥の町で自分が女子高生になっている夢を見ていた。声の出演は神木隆之介と上白石萌音。(以上、映画.comより)
予告編
「俺がお前で、お前が俺で!?」から始まる青春ぶっ飛びムービー!!
公開から3週間足らずで興行収入62億円の特大ヒット、もはや社会現象化しつつある本作、「流行り物には乗っとけ!」精神で見に行ってまいりました。
平日の夕方でしたが劇場は超満員!ほとんどが制服を着た中高生でした。学校帰りに友達と映画とかすごい羨ましい、、、(笑)
隣の男女5人組とか、すごい若々しい反応しててよかったですね。終わった後、女子が泣いてて、それを男子がおちょくりながら出て行ったのですが、このあとファストフード店に行ったり、ゲーセンで遊んだりするんだろうなー青春だなー(勝手な妄想)と、ひとり喫煙所へ向かいました(笑)
さて、本作の感想の前に僕がこれまでの新海誠作品をどう感じたかをさらっと書かせてください。とはいえ、「ほしのこえ」「秒速5センチメートル」「言の葉の庭」しか見れていないのですが、、、(汗) その程度の知識しか無い野郎の戯言と思って読んでください(予防線張りまくり) あと、新海ファンの方は不快に思うかもしれないので、読むのをやめてもらって結構です。。。
一言で言うと「あ、肌に合わねぇ(笑)」です。
初めて観たのは「秒速」なんですが、どうもノれなくでですね。なんか主人公の貴樹くんの一人相撲を延々見せられた結果、勝手に解決してワンモアタイムワンモアチャンスみたいな。
それでも「桜花抄」は「小学生が健気だ、、、」と思って感動しましたし、「コスモナウト」は貴樹にイライラしながらも主人公の女の子が可愛そうだなぁと思いました。
なので最後のエピソードで完全に冷めてしまった、というか貴樹にまったく感情移入できず、「勝手に自分に酔ってろや!!」と思ってしまいました。
目の前の自分を想ってくれる人も大事にできず、昔の思い出に振り回された挙句、「色々あったけど綺麗な思い出にして、君と僕は違う道を歩むんだね」みたいに美化するって僕は気持ち悪いなと思ってしまったわけです。
ただ、背景の素晴らしさは言わずもがなですし、脚本、劇伴、新海節ポエムが良い感じのバランスで作品としては間違いなく新海誠最高傑作だと思います。僕と合わないだけで。。。
で、「言の葉の庭」「ほしのこえ」という順番で観たのですが、それぞれアイデアとか背景は相変わらずすごいのですが、ちょっと印象は弱かったです。
特に「言の葉の庭」は女性像が男のファンタジーすぎる部分が目立ってしまって、その一点で強引に話をまとめちゃった感があって話の運びとしてもどうかなと。
まぁ、女性像美化されすぎ問題はこの3作に共通してあるので、新海監督の作家性の部分だと思うのですが。
と、まぁまとめると「主人公が内省的になった結果、自己憐憫からの自己陶酔的な方向にいってしまいう所が肌に合わないなぁ」というのが僕の新海作品への感想でした。
では、「君の名は。」は肌に合ったのか!?というところで、本作の話にいきたいと思います。(前置きが長い)
まずお話としては面白かったです!男女逆転ものといえば大林監督の名作「転校生」ですし、セカイ系といわれるような展開もエンターテイメント的な見せ場が作れるし、あと一つこれまた青春SFものにはありがちな要素があるんですが、これのおかげで謎解き要素も入って楽しかったです。
なによりこれだけの要素を107分にうまくまとめた新海さんスゲェと思いました。
本作は僕が観た3作と比べて圧倒的にスピード感が違うなと思いました。多少強引ではあると思いましたがグイグイ物語を進めていく疾走感でラストまで突っ走ってくれるのは、新海作品に対して飲み込み辛さを感じていた僕でも楽しめる作りになっていました。
前半部なんかはドタバタコメディをそのスピード感で見せてくれたので、結構普通に楽しみました!
特にRADWIMPSの主題歌がかかる、入れ替わった日常で主人公の瀧くん(神木隆之介)と三葉(上白石萌音)が心を通わせていくシーンは曲の雰囲気とスピード感がマッチしていてアガりました(笑)
ただこのシーンもったいないのは、お互いの生活にルールを設けるというのをナレーションで説明したところですかね。ナレーションを入れる事で良くも悪くもアニメ的すぎるのが気になって、せっかくの観客が物語に巻き込まれるようなスピーディーな見せ方の効果を削いでいる気がしました。
あとこれは好みの問題かもしれませんが、「このシーンでタイトル出してたらなぁ。テンションブチ上がるのになぁ。」とか思いました(笑)
冒頭の超アニメ的オープニングシーン全部カットでよかったんじゃないかと(笑)別に物語を語る重要なシーンでもなかったと感じたのですが。気づかなかっただけかな。。。
で、そこからはある仕掛けによって物語のトーンがガラッと変わるのですが、その展開自体はおもしろいんですよ。男女入れ替わりものにそれ足しちゃうか!と。
ただ、色んな楽しい要素ぶち込んだ結果、全体の脚本の荒さが目立ってしまった印象です。
あるSF的な要素の伏線もしくはミスリードで時系列がややこしくなるのですが、これが結構序盤からあります。
僕はアバンタイトルから前半部にかけてずっと引っかかって、「あれ、これどういうことだろう」と考えて観ていたため、楽しかった前半部も若干物語と距離を置いた形で見てしまい、感情移入できなかったです。
そのため「入れ替わってコミュニケートしてるうちにだんだん好きになっていく」という部分にイマイチ乗り切れず。
これは後にわかる真相のための伏線&ミスリードを長く引っ張りすぎたせいだと思いました。もしくはストーリーテリングが単に下手かのどちらかだと思います。ちょっと情報を出す順番をわかりやすく整理するだけで解消される問題だと思います。
で、真相がわかってからも大事なシーンで設定との矛盾があったりして上手くない。
これらの若干の詰めの甘さがノイズになって、瀧と三葉の物語に集中できなくなってくるわけです。
要は感情移入のためのシーンにノイズがあって感情移入できない、故にそんなに感動できない、もっと言えば泣けない(笑)
これは物語上、結構な問題だと思いました。
それこそ先述したアニメ的オープニングシーンを削って、前半部に心が通じあっていく過程を描くなり、「なぜ入れ替わる相手が瀧でないとダメだったか」ということを描けばもっとロマンチックになったのでは、と感じました。
あと、結末ですが僕はやっぱり肌に合いませんでした。震災を想起するような描写が入っているのに、あの描き方では「忘れよう」という風に見えました。
「色々大変なことがあったけど二人の想いは,,,」みたいなのはセカイ系として納得できるものですが、やっぱり災害が恋愛の背景になった印象だし、その他諸々の主人公たちが抱えていた想いが全て、恋愛に矮小化されてしまった気がしました。
あと、やっぱり年上女性に対するファンタジーが激しすぎるという女性像美化されすぎ問題が気になったり、RADWIMPSの曲も説明過多&くどいため胃もたれ気味だったり、諸々肌に合いませんでした。(笑)
色々不満点は挙げましたが、背景は相変わらず素晴らしいですし、なにより主人公が自己陶酔に陥らず、自分の手で未来に掴もうと能動的に行動するというのは、すごく好きでした!
ちょっと実験的な映像が挟まったり、コメディ演出があったり新海さんの観客に向けた姿勢はよかったなと思います。
僕が元々新海作品との相性が悪いというのもありますが、それでも前半部は結構楽しんだし、その疾走感にはノセられたので見てよかったとは思います!!
大ヒット作品ですし、もしかしたらシンゴジラ超えもあるかもしれない話題作ですので、熱が冷めないうちに是非劇場で観てください!!
やっぱりこれが突出した出来だと思います。
小説版読んだらもっとわかるみたいですね。
大林監督自身による「転校生」のリメイク。
本家よりこっちのほうが好きだったりします(笑)
本作と見比べると面白いかも!