『クリーピー 偽りの隣人』〜映画感想文〜
※この記事はちょっとだけネタバレしています
『クリーピー 偽りの隣人』(2016)
上映時間130分
「岸辺の旅」でカンヌ国際映画祭「ある視点」部門監督賞を受賞した黒沢清監督が、日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞した前川裕の小説「クリーピー」を実写映画化したサスペンススリラー。「東南角部屋二階の女」で長編監督デビューした池田千尋と黒沢監督が共同脚本を手がけ、奇妙な隣人に翻弄されるうちに深い闇に引きずり込まれていく夫婦の恐怖を、原作とは異なる映画オリジナルの展開で描き出す。元刑事の犯罪心理学者・高倉は、刑事時代の同僚である野上から、6年前に起きた一家失踪事件の分析を依頼され、唯一の生き残りである長女の記憶を探るが真相にたどり着けずにいた。そんな折、新居に引っ越した高倉と妻の康子は、隣人の西野一家にどこか違和感を抱いていた。ある日、高倉夫妻の家に西野の娘・澪が駆け込んできて、実は西野が父親ではなく全くの他人であるという驚くべき事実を打ち明ける。主人公の犯罪心理学者を西島秀俊、不気味な隣人を香川照之が演じるほか、竹内結子、東出昌大ら豪華キャストが集結。(以上、映画.comより)
予告編
ええぇ!?お父さんじゃ無いんですかぁ!?、、、いいと思います、そういうの。(劇中の香川さん風に)
「CURE」、「トウキョウソナタ」などの黒沢清監督の最新作ということで、観に行ってまいりました。
西島秀俊、竹内結子、香川照之という豪華キャストだけあって、老若男女さまざまな人でほぼ満席に近い状態でしたね。で、笑うポイントでは笑い声もあったし、ビックリするポイントでは隣のお姉さんが結構な勢いで飛び上がってたりして、なかなかいい雰囲気で観れました。
黒沢監督というと、僕的には「回路」が好きでして、テレビに映される白黒の人の写真の嫌な感じとか、最初に登場する「ヒトならざる存在」の動きには今まで発したことのない驚いた声(うわぁえいぃ!?!?みたいな)が出るくらいビビりました。あと鑑賞後しばらくは「よくわからん黒いシミ」を見るといやぁ〜な気持ちになるくらい後に引きずってましたね。
そんな感じで、黒沢作品の「怖さ」っていうのは、「ふとした瞬間に、日常にある別世界へのスイッチを入れてしまった怖さ」だと思っておりまして。
こちら側としてはなんてことないことがきっかけで、全くこっちの論理が通用しない世界と繋がってしまって、どんどんあっち側の磁場に引っ張られてしまう、という作品を作ってこられた監督だと思います。
そういう意味で所謂「リアル」ではなく、ある種ファンタジー的な作品が多く、その「リアリティ」と「ファンタジー」の線引きが微妙かつ大胆なので、わかりやすいエンターテイメント性とは相性が悪い、飲み込みづらい作品になってしまうというのが、僕の黒沢作品に対する印象です。(矛盾しまくりの文章ですいません。。形容できない。。)
逆に言えば、飲み込みづらさ=理に落ちなさこそが「恐怖」の本質であると僕は思うので、黒沢作品の怖さはビビりながらも大好きです(笑)
はい、長々と前置きをしましたが、それでは本作はどうだったか。
結論から言えば、今までの黒沢作品の特徴とエンタメ性のバランスがいい塩梅でとれた作品だったと思います。
実際、映画館のエレベーターの会話で、二人組の女性が「なんかめっちゃ怖かったんだけど、結局香川さんなんだったの、、、」みたいな会話が聞こえてきて、「我が意を得たり!!」という感じでした(笑)
ミステリー的なわかりやすい構造で、ある意味観客も安心してついていける物語ですが、様々な黒沢監督的な「違和感」のディテールが詰め込まれてて、黒沢作品好きとしてはサービス満点じゃねぇか!という感じです。
で、その「違和感」のディテールこそが黒沢作品の怖さの根源であると。
とにかく映画全体が嫌な感じで満ちているのが黒沢作品の魅力なんですが、本作も御多分に洩れずその魅力が満載です。
白い窓枠が映っているだけなのに不吉!家の玄関口が映っているだけなのになんか薄暗くて、風とか吹いててなんかヤダ!建物の入り口の半透明のビニールカーテンがピラピラしててキモい!!急にカメラが上がっていって、上から地形を取っているだけなのに不気味!!!
先に挙げた例は、まだホラー演出としてわかる感じですが、あからさまに怖くないはずの場面でもそれが仕掛けられていまして。
高倉が勤務先である大学のガラス張りになった明るい場所で、早紀(川口春奈)を事情聴取するシーンがあるんですが、背景のエキストラの動きが明らかに計算された動きをしています。
談笑している男子学生があるポイントで、何の脈絡もなくこちら側を凝視してきたり、話が核心に近づくに連れて一斉に学生が帰り始めたりと、背景がやたら気になる感じの画面になっています。
このシーンでの照明も非常に特徴的ですね。核心に近づくにつれてどんどん照明が暗くなっていって、背景のエキストラもいなくなって。
要するに画面を抽象化して、高倉と早紀だけの世界(もしくは高倉だけの世界)に見せる演出なんですが、まさに映画的な画面になっててサイコーです。
そういった背景にたくさん気持ち悪さの仕掛けがされていて、下手したら気付かないレベルですが無意識に気持ち悪さを感じ取ってしまう演出が積み重ねられているさすがの黒沢節です。
本作の「違和感」の大半を占めているのが、なんといっても香川照之さん演じる西野というキャラクター。
一見ただの気持ち悪い人(それだけでも嫌)ですが、まぁ会話はできる。でもなんとなく会話が成り立っていない。
前半の西野が出てくるシーンはそういった「特に何かがあったわけではないが何かが変」な感じが映画の緊張感を保ちつつ、ある種コメディ要素になっています。犬の躾とかチョコレートの件は、しっかり劇場でも笑いがありましたね。
で、この西野の「なんとなくコミュニケート出来ない感じ」が高倉の日常に侵食してきます。
鍵を握る少女、隣人の娘、元同僚たち、そして自分の妻までもが実はうまくコミュニケートできていないのでは、という予感が映画全体に滲み出てきます。
そしてその嫌な予感が臨界点に達した瞬間に、それまでの日常から予想もしていなかった世界に否応なしに連れて行かれる後半。
ここからは是非映画館で体験していただきたいので伏せますが、予告編から想像できるストーリーの斜め上をいきます(笑)
結構ジャンルごとガラッと変わってしまうような舞台だったり小道具が出てきて、異世界感はあるので、「ありえねー」となってしまうかもしれません。ここが黒沢作品とウマが合うかとの分かれ目です(笑)
ただ、この本作は設定からも推測できるように、北九州監禁殺人事件や尼崎事件といった実際の犯罪をベースにできています。
限りなくフィクション的に描かれていますが、実際に「罪悪感につけ込み巧みに洗脳してくる」人はいるわけです。
で、最終的に浮かび上がるのが「私たちのコミュニケーションの危うさ」だと僕は感じました。
日常の中にある会話。それは本当に通じ合っているのか。
実際、なんとなく会話を流してしまってコミュニケーションに齟齬が生まれたり、普通に言った言葉で急に相手を怒らせてしまうことってありますよね。(僕だけかもしれない、、、)
その「コミュニケーションが成立しているという前提条件」が全く自分の錯覚だったら。錯覚と気づいた故に今まで見ていた世界が信用できなくなったら。
そういう怖さがこの映画の語る怖さだと感じました。
もちろん不満点もあります。
いくらなんでも警察が無能すぎる!これが最大の不満点です。警察がちゃんとしてたらこんなことにはならなかっただろうに。あと、重要参考人の家に一人で乗り込むなよ!!
まぁこれもコミュニケーションレス故だと思えばなんとか、、、
昨今、「とりあえずホラーだし幽霊とかドーンと出せばいいか!」とか「本当に怖いのは人間です(キリッ)」みたいなホラー、スリラーがある中で、本作みたいな「よくわからんけど怖い」映画が大きく宣伝されてるのが嬉しい限りです!
黒沢作品のなかでも一番わかりやすいエンターテイメントですし、竹内結子がよくわからんけど色っぽいですし、あと「嫁の心夫知らず」映画としても楽しめる傑作でした!
オススメです!!
原作、15回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞とってたんですね。知らなかった、、、
初めての黒沢作品はこれでしたねぇ
2度と読みたくないですが一応興味があれば、、、
『ヒメアノ〜ル』〜映画感想文〜
※この記事はちょっとだけネタバレしています。
『ヒメアノ〜ル』(2016)
上映時間99分
監督・脚本 吉田恵輔
「行け!稲中卓球部」「ヒミズ」の古谷実による同名コミックを、「V6」の森田剛主演で実写映画化。森田が、次々と殺人を重ねていく主人公の快楽殺人犯・森田正一役を演じ、「純喫茶磯辺」「銀の匙 Silver Spoon」などを手がけた吉田恵輔監督がメガホンをとった。平凡な毎日に焦りを感じながら、ビルの清掃のパートタイマーとして働いている岡田は、同僚の安藤から思いを寄せるカフェの店員ユカとの恋のキューピッド役を頼まれる。ユカが働くカフェで、高校時代に過酷ないじめに遭っていた同級生の森田正一と再会する岡田だったが、ユカから彼女が森田にストーキングをされている事実を知らされる。岡田役を濱田岳、ユカ役を佐津川愛美、安藤役をムロツヨシがそれぞれ演じる。 (以上、映画.comより)
予告編
お母さぁ〜ん、麦茶持ってきて〜!あと、、、
電話の相手は確認してね。
吉田恵輔監督の最新作ということで観に行ってまいりました。やっぱりV6効果なのか、割と若めな女性も多くて、その女性たちが所々「ビクッ!!!!」っと驚いているのもほんとによかったです。(ムロツヨシの眼で)
吉田恵輔さんといえば僕は「ばしゃ馬さんとビッグマウス」が生涯ベスト級に大事な作品でして、何回観ても胸が締め付けられるような気持ちになって泣いてしまう作品でして、主演の麻生久美子さんが大好きな女優さんの一人になってしまったぐらいでして、、、(以下略)
他にも「机のなかみ」や「純喫茶磯辺」など、基本はコメディ的な作品が多く、その中でも「さんかく」は吉田恵輔コメディの大傑作だと思います。
以上の作品を並べてみてもわかるのですが、吉田監督は「痛々しいけど可笑しいコメディ」の中に、「今まで想像もしたり目を向けようとしなかった、しかしそこに厳然とある現実」を展開することで、それまでコメディ的であった話がガラッとひっくり返るというお話をずっと描いている監督だと思います。
で、本作はまさにそれが全面に、より鋭く、文字どおり牙を向いている作品でした。
まずは序盤、「キモい先輩の好きな人と恋愛関係になっちゃった!」的なラブコメ展開になっていくんですが、ここの役者さんたちのコメディ演技が素晴らしいです。
主人公の岡田くん(濱田岳)のダメな童貞感と、先輩に気を使ってる後輩感がハンパない。目の泳ぎ方とか、先輩の無茶な要求に対しての「マジすかぁ、、、」とか、超リアル(笑)あるある(笑)
一方その先輩の安藤さん(ムロツヨシ)の佇まいも良いです。ほとんど無表情で、じっとり話す感じが非常にアブないやつ(笑)です。片思い中のユカちゃんをデートに誘うくだりの不自然さとか、「あぁ〜、気持ち悪い上に最悪だこいつ(笑)」という感じで超笑えます。
で、その安藤さんの片思い相手のユカちゃん(佐津川愛美)の尋常じゃないエロ可愛さ!!
しかも「エロでござい!」的なものじゃなく、清純な感じで小動物的な可愛さを遺憾なく発揮するんだけど、「付き合ってるから色々なこと(エッチなのもオッケーだよ♡)したいなぁ〜」という清楚系ビッ◯の権化(褒めてます)。
正直なところ、告白のシーンや、居酒屋デートからのセックスに至るまでのシーンで僕は完全にユキちゃんに惚れていました(真顔)
とりあえず天使系ビッ◯の告白シーンの画像、置いときますね。
で、このシーンは本当に可笑しくて、微笑ましい二人のやりとりにニヤニヤしつつ笑えるという細かい描写が続いてからの「あ、後ろに、、、」からの爆笑シーンになっていて、久しぶりに映画館で声を出して笑いました。
ムロツヨシさんの絶叫の画像、置いときますね。
ここまでは超可笑しいラブコメ映画なんですが、ちょこちょこ主演の森田剛さん演じる森田が絡んできまして。
この映画で特筆すべきは、この森田の圧倒的な存在感です。
森田と岡田の会話シーンの違和感、街の清掃のおじさんと森田の会話の異常さ、そしてその佇まいに至るまで、「何か人間として大切なものが欠落している感」があって、森田剛さんまでそういう人なんじゃないかと思えるレベルでした。
その森田の存在感と安藤さんの異常さが、前半の緊張感を良い感じに出していました。
あと、この前半部は比較的カメラが安定した撮影で、衣装から小道具まで画面が明るいポップな色をしているのですが、森田のシーンだけカメラがグラグラ揺れ、色も暗い感じになっていて、非常に計算されている画面作りでした。
そして前半部クライマックス、いよいよ岡田とユキちゃんが幸せの絶頂!(ダブルミーニング)のシーン。
画面が二人の部屋を映し、エクスタシィィィ!!な声(シングルミーニング)が響くのに被せて、不穏な音楽と部屋を見上げる森田のシルエットが映り、タイトル「HIME ANOLE」と映倫R15の文字が出てくる完璧なタイトルクレジット。
「これまでのラブコメ展開はアバンタイトルで、ここから凄惨なことになっていきますよ」と言わんばかりのこのタイトルクレジットには鳥肌が立ちました。
そして、これを境に日常シーンもカメラがグラグラになり、どんどん画面全体が暗い画作りになっていきます。
そこから展開される森田の凄惨な暴力が、直接のグロ描写は無いものの本当に「生理的に嫌」でして。包丁で細かく刺すとか、逆にゆっくり刺しこむとか、銃の弾着の嫌な感じとか、レイプ描写の嫌さとか、、、
なんといってもタイトル直後の殺人シーンの嫌な感じがハンパじゃ無いです。
高校時代、森田と一緒にイジメられていた和草くん(駒木根隆介)とその彼女の久美子(山田真歩)が殺されるのですが、死に様が本当に悲惨。頭をカチ割られて体が痙攣する感じとか、徐々に殺されていく久美子の失禁とか。
しかも、そのシーンの森田が久美子を殺すショットと、岡田とユキのセックスのショットを、イマジナリーラインを合わせて並列させる編集の悪趣味な感じ。(絶賛してます)
こうやって並べられると、セックスという行為の持つある種の暴力性とか、岡田とユキの関係の不安定さとか意識せざるを得なくなって非常に嫌な気持ちに(絶賛してm)。
そしてこのシーンこそ、前述した吉田恵輔の作家性が牙を向いた瞬間であるわけです。
「あるところでカップルが幸せに浸っている頃、同時に目を背けたい現実が誰かを殺している、そしてその現実は、実はすぐ近くにある。」そういうシーンだと思いました。
殺されたカップルのラッパー時代の画像置いときますね。(余計な情報)
ちなみにこの後に続く、事後の岡田とユキの会話でユキの元彼人数が発覚して岡田がふてくされるシーンや、童貞をこじらせた岡田が"あるモノ"を購入し、ユキにドン引かれた挙句、ユキは経験済みだったシーンは可笑しいのですが、やはり「男側の勝手な幻想に対して身も蓋もない現実が現れる」というシーンに見えてくるという上手い脚本。
そして終盤、ある人物が森田の暴力を受けたのがきっかけで、森田との過去を語りだす岡田。森田の行動の原因にひとまず答えが出て、いよいよ森田と対峙するクライマックス。
岡田が森田を説得するのですが、まさかの森田の返答に「理解できたつもりが実は全く理解できていなかった」という逆転構造が再び浮き上がります。
そんな「理解不能」の森田に振り回されながらも、最後の最後で森田が見せる「人間らしさ」とあまりにも哀しい「大切な記憶」に、感動というか、胸が締め付けられるような気持ちになりました。
もちろん、暴力描写もありますし心が曇ったまま映画が終わるので人によってはただ不快な映画になってしまうかもしれませんが、前半は思いっきり笑って、後半は嫌な気持ちになり、観終わってから「人との繋がり」や「他者への想像力」を考え直すことができる作品だと思いました。
他にも細かい伏線(冒頭の足跡ともう一度出てくる足跡とか、森田の銃を向けて放つ一言とか)のこととか書きたいのですが、いつもの字数より大幅に多くなっているのでやめます(まとめ下手)
前回ポストした「アイアムアヒーロー」に続き(アイアムアヒーローの記事はこちらです)、こういう邦画の素晴らしい作品がシネコンで観れるという事実と、いつもの記事より字数が多いということが、この映画に対して僕が超思い入れてしまった証拠なので、オススメです!と言わねばなりません!(強引)
オススメです!!是非映画館で!!
観終わった帰り道には是非この曲を。
吉田恵輔監督ならこれらも是非。
『アイアムアヒーロー』〜映画感想文〜
※この記事はちょっとだけネタバレしています
※グロテスクな表現も含みます
『アイアムアヒーロー』(2016)
上映時間127分
花沢健吾のベストセラーコミックを、大泉洋主演で実写映画化したパニックホラー。冴えない漫画家アシスタントの主人公・鈴木英雄が、謎のウィルスによって「ZQN(ゾキュン)」と呼ばれるゾンビと化した人々に襲われ、逃亡の道中で出会った女子高生の比呂美と、元看護師の藪とともに不器用に戦いながらも、必死でサバイバルしていく姿を描く。主人公・英雄を演じる大泉と、歯のない赤ん坊ZQNにかまれ、人間に危害を加えない半ZQN状態になるヒロイン・比呂美役の有村架純、大胆な行動力でZQNに立ち向かう藪役の長澤まさみが共演。「GANTZ」「図書館戦争」シリーズを手がける佐藤信介監督がメガホンをとった。(以上、映画.comより)
予告編
英雄(ヒーロー)見参!!!!
R15作品、世界でも認められた和製ゾンビ映画!ということで観に行って参りました。
土曜日の昼に行ったからか結構人入ってましたね。隣に座ってた女子高生が途中からガンガン泣き出して、終わった後「ほんとに怖かったぁ、、」って言ってたのが本当に可愛くてサイコーでしたね(ぐう畜)
話題になってましたが、キャストのオールスターっぷりを見て「いくらR15でもなぁ」とタカをくくっていたのですが、実際に観て「これほんとにR15かよ!!(歓喜)」という感じになりました(笑)
もうとにかくZQN(ゾキュン)が気持ち悪い(賞賛)
ビジュアルも動きも本当によくやったなぁという感じで、今っぽいゾンビ感なんだけどバイオハザードシリーズほど化け物でもなく、あくまで人間。
言葉を発したり結構ギリギリまで意識があるっていうのも、気持ち悪さに拍車をかけてると思いますね。ぶつぶつ同じ言葉を繰り返してるのってかなりイヤな感じありますよね。ここら辺はJホラーっぽい。
Jホラー的といえば本作の冒頭、彼女がZQN化するシーンのイヤな感じは完全にJホラー的演出で最高でした。
ベッドからの起き上がりのイヤな動き、転がり落ちてからのイヤな動き、歯の抜け方(笑)正直僕はこのシーンが一番怖かったですね(笑)
続く仕事場のシーンのドランクドラゴンの塚地さんもよかったです。
ZQNになったマキタスポーツさんに日頃の不満をぶつけるシーンのイヤな感じ、そのままZQNに変化していく「どこまでが人間かわからない」感じもいい感じにイヤな感じ(矛盾)でした。
そこからの「日常がちょっとずつ非日常になっていってもう大惨事!」な状況を長回しで緊張感保ったまま、見せる範囲を広くしていく見せ方も巧かったですね。まんまと乗せられました(笑)
ちなみにですが「なんか既視感あるなぁ」と思ったらスピルバーグの『宇宙戦争』もこんな感じでしたね(どうでもいい文章)
で、まぁそっからはサバイバルパニックものになっていくんですが、人の殺し方もZQNの殺しっぷりもサイコーでした。
ヘッドショットしたら人の頭はそういう形になるよね、とか、血の吹き出し具合とか「これでR15で映倫に話つけたスタッフは偉い!」と思いました。
ラストはZQNの大量虐殺なんですが、こんなに死体と血と薬莢が転がってる映画は久しぶりに観ました(笑)
あとこのショッピングモールどうやって撮影したんだろうと思ったら、韓国のアウトレットの跡地らしくて、いい場所見つけたなーと思いました。
荒れ具合がリアル(というか本当に荒れてる)
サイコー!!!!
で、こんな風に「とにかくグロい」とか「気持ち悪い」が売りになっているんですが(もちろんそれも大きな魅力ですが)、本作はちょっと泣けるんですよね。
漫画家を諦められないけど芽が出ないダメダメ30代な鈴木英雄(大泉洋)。昔、漫画賞に受賞した時のトロフィーとか眺めちゃうダメさ。でもその気持ちわかるぞ(笑)
そんな英雄に堪忍袋の緒が切れた彼女(片瀬那奈)が、ブチ切れるシーンはなんかもう自分が怒られてる気分でちょっと本気でヘコみました(ダメ感)
その後も、ZQNがいるのに「銃刀法違反になるから」と言ってせっかくの銃を使わなかったり、小悪党にボコられても平謝りだったりダメさを遺憾なく発揮する英雄。
そんな英雄が「勇気を振り絞って扉を開ける」シーンは本当に号泣ものでした。
イメージで何回も失敗するくだりとか、「わかるぞ、わかるぞぉ!でも頑張れよぉ!!」と完全に熱が入ってしまいまして、初めて彼が銃を撃ったシーンで思わずガッツポーズしてしまいました(笑)
まさにRHYMESTARの名曲『ONCE AGAIN』の宇多丸バース!
本作で出てくるZQNはみんな「過去の記憶」に囚われてしまった存在なんですね。
で、人によっては「過去の栄光」だったり「不満に思っていること」だったり「頑張ってたこと」の記憶だったりするわけです。深読みするなら、この辺はちょっと現代人の在り方を象徴してるのかなぁと。酔っ払った時ってこうなっちゃいますよね。で、やっぱりそういうのってちょっとダサかったりウザい感じに見えてしまう(笑)
そんなZQN達を「撃ち壊し」ながら進む、夢を諦められない人だった英雄。ZQNを一先ず片付けた英雄の姿は「カッコイイ」の一言でした。
そして、ラストの名前を名乗るシーンがズシンと重く感じてからの「アイアムアヒーロー」というタイトルで鳥肌が立ちました。
まぁZQNに関しての謎はほとんど解決されていないですし、終わり方は賛否両論あるかもしれません。でもそこが主軸の映画では無いと僕は思います。
そんなことより不満点は、有村架純ちゃんがずっと可愛いままなことですね。もうちょっと気持ち悪くなった有村架純が見たかった!!!(フェチ)
可愛いじゃねぇか!感染してるならもっと特殊メイクマシマシにしろよ!!
とまぁそんな感じで、尻切れトンボな分この後どうなったかが想像できたり、ZQNが現代人を批評的に象徴しているみたいな読み解きもできますし、難しく考えなくてもアツくなれて興奮できるエンターテイメント作品であることは間違いないです!
和製ゾンビ映画の傑作でした!!
原作も読んでみようかなぁ。
『ちはやふる 下の句』〜映画感想文〜
※この記事はちょっとだけネタバレしています
『ちはやふる 下の句』(2016)
上映時間103分
監督・脚本 小林徳宏
広瀬すず主演で末次由紀の大ヒットコミックを実写映画化した「ちはやふる」2部作の後編。主人公・綾瀬千早と幼なじみの真島太一、綿谷新の3人を中心に、それぞれの思いを胸に競技かるたに打ち込み、全国大会を目指す高校生たちの青春を描く。キャストには、千早役の広瀬のほか、太一役に野村周平、新役に真剣佑とフレッシュな若手が集結。千早や太一と同じ瑞沢高校競技かるた部の仲間で、上白石萌音、森永悠希、矢本悠馬、競技かるた界の強豪で清水尋也、松岡茉優らが共演している。(以上、映画.comより)
予告編
「また続編で会おうね!」、、、「いつや?(涙目)」
はい。原作のファンであり、「上の句」の期待以上の出来に歓喜した僕なので、実は公開初日に観に行っていました。
「上の句」に関しては、主に「脚本の巧みさ」と「役者陣の良さ」が印象に残ってて、青春映画として、明快な作品だったと感想を述べました。(上の句の感想はこちらの記事です)
で、今回の「下の句」ですが、前作とは結構トーンが違う映画だなぁと思いました。
前作がかるたに打ち込む中で友情を育む話なのに対して、本作は「打ち込む意味」を問う話のような気がして、その意味で前作より主人公達の葛藤のシーンが多く、ぶっちゃけ後半までは爽快感が無い映画になっていました。
まぁでもこれは起承転結の起の部分は前作で終わってるから、後編としては正しい作りなのかなぁと思います。
前作では「一致団結!全国大会頑張るぞー!」となった瑞沢かるた部と、「新、かるたやめるってよ。」というところで終わりましたが、今作はいきなり千早と太一が新に会いに行くところから始まります。
変わってしまった友達に悶々とする千早の前に最強のクイーン若宮詩暢(松岡茉優)登場で、千早と太一のかるたへの想いにすれ違いが、、、
ここからの二人が苦悩する展開はちょっと中だるみした感が否めないですが、先述した通りの構成なので、ラストにどーんとカタルシスを与えるためのものなんだろうと思います。
それにしてもちょっと間延びした音楽の使い方とか、いわゆる「邦画っぽいなー」と言われるようなベタベタした演出など、勿体無い部分が目立っちゃってました。
でも、1人になった新を千早が、孤立した千早を太一が、それぞれ「自分が強くなることで繋がろうとする」というストーリーを丁寧に描けてたのではないかと思います(必死のフォロー)
で、そういう葛藤のシーン≒主人公たちのウジウジが長かった分、ラストの試合で葛藤を一先ず乗り越え、かるたに打ち込む意味を見出し、試合に臨む主人公たちのアクション1つ1つにはドッと感動しました。
それと「何かに打ち込む意味とは」への原田先生の回答もよかったですねー。これは多分原作に無い映画オリジナルの台詞なので、意表を突かれてしまいボロボロに泣きました(笑)
あと、やっぱり北央高校の須藤さんが「マル秘ノート」を渡すところですねはグッときましたねー。
原作ではヒョロくんが太一に渡すんですが、部長の須藤さんが千早に渡すことで、重みが変わってくる。
「敵だった人でさえ味方だ」っていうメッセージがより強調されていたと思います。
「何があっても、1人になってはダメなんだよ!」
という台詞が出てきますが最終的に「誰もが1人ぼっちでは無い」というものすごく真っ当なメッセージが浮き上がってきます。これは原作が持つメッセージの1つでもありますが。
かるたを通じて過去の言葉と繋がること、その言葉を次に繋げること、かるたを通じて人と繋がること、情熱を繋げること。
改めて、この作品の「何かと繋がることの大切さ」の魅力を感じることができる映画だったかなと思いました。
さて、ここまで色々書いてきましたが、この映画の一番大切なことをまだ書いていません。
大正義、詩暢ちゃん a.k.a 松岡茉優!!!
前作では「広瀬すずの魅力すげぇ!!」ってことを言ってましたが本作は「松岡茉優の色気すげぇ!!」ってことですね(雑)
京言葉を使うのですが、関西人の僕としてもまったく違和感のない京都弁っぷり。京都の女性のちょっといけずな感じも完璧に演じてました。
あと試合のシーンはもちろんですが、大事な場面でのアップは絶対に「瞬き」をしないんですよね。演技論でよく言われる目の演技ですが、瞬きをしないことで「不動のクイーンの貫禄」みたいなのも表現できてたんじゃないかと思います。
で、広瀬すずとの試合のシーンの二人の凛々しさが半端じゃ無い。
もう本当に画面に映ってる二人の姿が美しいんですよ。これだけで映画館に行く価値がある(暴論)
ダサいキャラクターに反応するときの演じ分けも完璧だったし、本当にもう松岡茉優さんには「最高だ!」という言葉しか出てこないですね、はい。
色々不満点も書きましたし、「そういえば威風堂々の使い方サイコー!」ってことを書くのを忘れたり、最後の方ただの松岡茉優賛美になっちゃいましたが、是非映画館で上の句とセットで観れる今、今観て欲しい作品です!!
続編も制作されるということで、「ちはやふる 上の句&下の句」は絶対に観るべき、邦画青春映画の傑作だと思います!
オススメです!!
松岡茉優に鼻で笑われたい。
全巻並べると背表紙が綺麗なんですよねー
『ズートピア』〜映画感想文〜
※この記事はちょっとだけネタバレしています
『ズートピア』(2016)
これを取り返そうとするジュディも可愛かったなぁ、、、